自己肯定感を持てない原因として、過去のトラウマがあるという人も多いでしょう。
誰しも思い出したくない過去はあるもので、そんなことは忘れて前に進もうといわれても、なかなかそう簡単に忘れられるはずがありません。
ならばいっそ自分の嫌な過去をまとめて受け入れてしまうのがベストなのではないでしょうか。
もしかしたらその過去があったから今の自分の成長に繋がっているのかもしれないですし、解釈次第ではプラスにもとらえられるかもしれません。
人間どうしても、自分だけが不幸な目にあったと思うことには耐えられません。
だけど見方を変えたらそれは、自分だけしかできない経験ができたということかもしれません。
映画化もされた角田光代さんの「八日目の蝉」という小説があります。
主人公の恵理菜は、自分が幼少の頃に誘拐犯に育てられたという過去を受け入れられずにいました。
しかし友人の千草からその過去に向き合ってみるように勧められ、かつてその誘拐犯と過ごした地まで足を運びます。
そこで自分が、その誘拐犯から愛情をもって育てられたという事実を思い出していきました。
誘拐犯の野々宮希和子はかつての父の不倫相手であり、赤ん坊だった恵理菜の笑顔を見た時に自分が育てようと決意して誘拐しました。
「この赤ん坊を幸せにできるのは自分しかいない」と思っての犯行だったのです。
タイトルの「八日目の蝉」というのは千草が恵理菜に語った例えから来ています。
八日目の蝉は周りの仲間がみんないなくなっているから寂しいのではないかという恵理菜に対して、千草は「八日目の蝉は自分だけが誰も見れなかった景色を見ることができる」ということを伝えます。
恵理菜はそこから、自分だけが味わらないといけなかった運命を憎むのではなく、そこにも深い意味があったのだと思うようになっていくのです。
うろ覚えな部分があるので、詳しくは小説か映画を見ていただけたらと思います。
感動すること間違いありません。
自分の運命を受け入れるということに関して、もう1冊おすすめしたい本がサン・テグジュペリの世界的名作「星の王子様」です。
タイトルは知っていてもあらすじを知らない方もいるかもしれませんが、内容は星の王子様がその星を出て他の星を冒険し、最後は地球にたどり着くという単純なものです。
しかし作品を通してのメッセージというのは童話とは思えないほど難解で、読む人により解釈が分かれるほどです。
全体を通して描かれているのは、人生において大事なことは何か、幸福とは何かといった普遍的なテーマです。
その中でも最も考えさせられたエピソードを紹介します。
王子様は自分の星で一本のバラを大切に育て、そのバラとの友情を育んでいました。
しかし地球に来てたくさんのバラが咲いているのを目にして、自分がたった一本のバラに愛情を注いでいたことはつまらないことだったと嘆きます。
しかし出会った狐から、「自分が愛情をもって育てたのなら、たった一本のバラでもそれがお前にとっては一番のバラだ」ということを気付かされます。
誰しもつい他の人と同じようでありたいとか思ってしまいますが、自分だけが出会えた人間、出来事というのが最も貴重で価値のあるものです。
たとえそれが世間的に見ればちっぽけなものだったとしても、自分が思い入れのあるものならそれは大切にするべきではないでしょうか。
これもいろんな解釈のされるエピソードではありますが、僕はそんなふうにとりました。