森岡毅に学ぶマーケティング論

ユニバーサルスタジオジャパンといえば誰もが知るテーマパークで、関西以外からも多くの人が訪れています。
今や大人気のUSJですが実は経営破綻にまで追い込まれたことがあり、それを乗り越えてからも売上が伸び悩んでいる時期が続いていました。


そのような状況を脱出し始めたのは2010年頃と意外と最近のことで、一人のマーケターの入社がきっかけでした。
それが森岡毅さんという方で、彼のマーケティング戦略により、USJは見事V字回復を果たしました。

 

2010年頃とそれ以降のUSJでは大きな変化があります。
一番の変化は、それまでハリウッド映画のアトラクションしかなかったのに対して、今では日本のアニメやゲームなど幅広いコンテンツを取り入れていることです。
森岡さんは関西の3倍のマーケットがある関東に立っている東京ディズニーランドに勝つためには、これまで以上にターゲット層を増やした集客をしないと太刀打ちできないと判断しました。


消費者のエンタメの接触時間のうち、映画コンテンツに割かれる時間はトップですがそれでも10%に過ぎません。
そこだけにターゲットを絞っては残りの90%を逃してしまうと判断したわけです。

 

これに関しては、本人が書かれた「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」という本がとても分かりやすく説明されています。
森岡さんによれば、マーケティングで最も大事なのは消費者視点ということです。
当たり前のことのようですが、意外にこれが蔑ろにされてしまいます。


特にテーマパーク業界というのはクリエイティブ中心の運営がされていて、技術部に対してマーケティング部の権限が弱かったそうです。
しかし森岡さんは作られたものに対して消費者価値からずれていないか確認して、何度も口出しするようにしました。

 

また会社というのはいろいろな利害が絡むところなので、会社の利害と個人の利害が一致しないということも起きてしまい、それも消費者視点の開発にとってマイナスに働きます。
マーケティング部にそういうものを断ち切ってまで消費者視点を貫けるだけの権限がなければならず、森岡さんはその環境を整えたのです。

 

もう一冊「苦しかったときの話をしようか」という森岡さんの著書をおすすめしたいのですが、これは森岡さんのビジネスライフを振り返っているとともに、キャリア論、自己啓発的な内容も含まれています。
いろんなことが書かれているのですべてに触れられませんが、僕がなるほどと思った内容は以下の3つです。

 

まず、職能が身につく会社を選んで入社するべきだということです。
昔ならまだしも、これからは若いうちに自分のスキルを磨いておかないとキャリアの成功が得られなくなります。

ゼネラリストをつくるといわれて入社すると中途半端にしか職能が身につかない可能性があるので、どんな職能を得られるかを真剣に考えるべきです。

 

次に自分自身をブランディングするという発想を持つことです。
マーケティング戦略を商品や会社ではなく、自分に対して使うイメージです。


そのためには自分の設計図を作って、そこに書かれた自分通りに振る舞うように努力しないといけません。
理想の自分になれないという悩みはよくありますが、その解決にマーケティング思考を持ち込んでいるのはおもしろいと思いました。

 

最後は短所をなくすくらいなら長所を伸ばせという考え方です。
これについては引用します。
「自分の強みの裏側にある弱みを自分で克服する努力などは無駄の極みである。そんな暇があれば、そこに強みを持つ人を探し出して、辞を低くして力を借りればよい。たいていの場合、君の凹に対して強みを持つ相手の特徴は、君の凸を喜んでくれる場合が多い。なぜなら、その相手は君とは真逆の特性を持っている可能性が高いからだ。君が自分の弱点を自覚し、人の力を借りようとするとき、その人の価値を輝かせる場を創り出すことができる。人を輝かせるとき、君は同時に輝いているのだ」

 

森岡さんは現在沖縄に新しいテーマパークを作ろうと事業を進めておられます。
もし実現すれば大きなインバウンドになることは間違いないでしょう。


やがては日本のエンタメを活用したテーマパークを外国に立てることを目指しているそうです。
テーマパーク業界は世界的には伸びていますが、日本では下火になっています。
日本のエンタメは世界的に人気がありますが、テーマパーク業界ではそのポテンシャルを十分活かせているとはいえません。


人口減少でどの産業も将来が暗く感じられる現在の日本ですが、工夫次第では結果を変えられるかもしれないと思うと希望があると感じられます。