目的ありきのキャリア論② 目的は他者のためのものであるべき

仕事を充実させるためには、自分の目的を決めてから仕事選びをするべきだということを、前回の記事で書きました。

ではその目的はどういうものであるべきかということについてです。

まずそれは自分のためだけでなく、他人や社会のためにもなるものであるべきだと考えています。

せっかく数え切れないほどの人間がいるこの世界に生まれてきて、自分1人のためだけで完結してしまう人生というのはあまりにももったいないと思うのです。

人生というのは何を得るかよりも何を与えたかであり、例えば歴史上の人物であってもその時代の人々や後世に与えた影響で評価されます。

立場や地位というのは自分が死んでしまうとなくなる儚いものですが、誰かに与えたものというのは自分が死んだとしても確かに残るものです。

 

さらに現代は、人間が利己から利他へと向かわないといけない時代になっています。

なぜなら格差の拡大や環境問題など人類規模での危機が訪れている現状で、根本的に自分のためから他人のためへという価値観の転換を行わないと未来はないからです。

かつての資本主義を発展させる段階の時代なら、自分の利益を求める姿勢が社会のために役立ったかもしれません。

しかし今はその資本主義が限界をきたしていて、どうやって持続させるかという時代です。

だからこそ、これからは利他の価値観が不可欠になるのです。

 

しかしそういう書き方をするときれいごとに聞こえてしまうかもしれないので、もう少し俗っぽく他人のために生きるべき理由を述べたいと思います。

ここで紹介したいのが、アダム・グラントの「GIVE&TAKE 『与える人』こそ成功する時代」というビジネス書です。

この本では短期的には自分の地位にこだわる人間のほうが成功するが、長期的に見れば他人志向の人間の方が成功するということをデータを使って証明しています。

しかしここで注意すべきなのは、無条件に他人に尽くせばいいというわけではないということです。

この本によれば自己犠牲型の人間は、心身に害をもたらして他人に利用される恐れがあるため成功する可能性が低くなってしまうそうです。

つまり自分も他人も大事にすべきだということです。

 

また心理学的に見ても、自己目標よりも他己目標を立ててそれを達成する方が不安やうつの症状が改善して人間関係も良くなるというデータがあるそうです。

精神的に落ち込んでいる人がボランティアをすることで回復したという話しも聞いたことがあります。

他人のために生きることが、結局は自分のためにもなるということが分かると思います。

 

自分だけが成功するために他人を手段としか思わなかったとしたら、それで仮に栄光を得られたとしても、その人は孤独だし本当の幸福感は得られません。

 

誰か一人でもいいですから、とにかく誰かと繋がって何かを与えられたと実感できることが、そのまま自分の幸福感につながるはずです。